淫行勧誘罪

淫行勧誘罪について

営利の目的で、淫行の常習のない女子(成年者も含みます)を勧誘して姦淫させたる行為です。

罪の重さは?

3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処するものとされています。

個々の要件

「営利の目的」とは

自らが財産上の利益を得る目的、または第三者に財産上の利益を得させる目的のことをいいます。反復継続して利益を得る(得させる)目的までは要求されておらず、一時的に利益を得る目的でもいいとされています。

「淫行の常習のない女子」とは

「不特定を相手に性的な交渉をもつ習慣のない女子」と解する見解もあれば、「売春の常習者」と狭く解する見解もあります。前者と解釈してしまうと、捜査段階で、被害女性の性生活について詳しく聞き取る必要性が出てしまい、それを避けたいという意図も後者の見解にはあるように思われます。なお「淫行」とは性交だけではなく、性交類似行為(口腔性交、肛門性交等)も含まれるため、後者の見解でもひろく性風俗産業に従事していないことが必要になります。

「姦淫」とは

性交(男性器を女性器に挿入すること)をいい、性交類似行為は含まれません。刑法旧177条における「姦淫」は性交類似行為を含まないものとされており、その後2017年の法改正後でも「姦淫」の意味は変更していないものと解されます(2017年改正で性交類似行為も姦淫に含まれるようになる可能性もあるとの見解もありますが、解釈論として無理があるように思われます。)。

実際の逮捕例

淫行勧誘罪は71年ほど適用されたことがなかったのですが、2017年にAV制作会社がAV出演経験のない女性を勧誘し、性交を含む内容のAV作品に出演させた行為が、淫行勧誘罪に該当するとして、その会社の社長が逮捕されました。 ただ、この事件は不起訴になっていますが、淫行勧誘罪には該当しないとして不起訴になったのか、該当するが刑事罰を科すほどの悪質性はないとして不起訴になったのかは不明です。

罪を認める場合の弁護方針

拘留刑のほか、罰金刑も定められているため、起訴猶予となる可能性はほとんどなく、よくて略式起訴(書面による裁判を求める起訴であり、裁判所への呼び出しはなく、罰金を払うよう命じる略式命令が自宅に送られてきます。)がなされ、罰金刑となります。

罪を認めた場合は情状を軽くするため、被害者と示談をする必要があります。しかし、示談交渉の相手は被害者の両親となり、被害感情を強いため、示談が成立する可能性も低く、弁護士に会うことさせ拒否されることが多いです。しかし、最初から示談を諦めることは、反省の意思なしとみられてしまうため、示談を成立させるだけの努力が必要です(かといって、執拗に示談を求めることは被害感情を逆に高めてしまうため、逆効果です。)。

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