面会要求罪(182条)

面会要求罪とはどのような行為か

面会要求罪はその段階により二つの罪に分かれます。

A

わいせつの目的で、16歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をすること(行為の対象が13歳以上16歳であるときは、出生日が5年以上離れている場合に限る。)。

  1. 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
  2. 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
  3. 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。

B

Aの罪を犯し、よってわいせつの目的で当該16歳未満の者と面会をすること。
Bの罪を犯し、わいせつの目的を達した場合は、相手の同意があっても、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が成立します。

罪の重さは?

Aの場合

1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられます。

Bの場合

2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する。

こうした行為が犯罪とされた理由

要求面会罪はグルーミング罪ともよばれるもので、2023年刑法改正で新しく定められた犯罪です。グルーミングというと、普通は犬や猫などの毛づくろいをする行為を指しますが、ここから子供に対する懐柔行為をチャイルドグルーミングと呼ぶようになり、海外ではこれを処罰する法律もできました。

これは、将来子どもに対してわいせつ行為や性交等を行う目的で、その準備行為として、子どもにはその目的を隠して近づき、当初は悩みを聞いたりして「いいおじさん」「いいお兄さん」としてふるまい、その後懇請したり、脅したりして、若年者に性交等やわいせつ行為を行うという被害実態があるためです。換言すれば、グルーミング行為が介在することによって、行為者と若年者の面会が実現し、その後、性行為が行われる時点では、暴行・脅迫がなくても行為者が未成年に対する性交等を獲得することができてしまっているという実態があるのです。

なぜ16歳未満が対象者なのか

176条3項、177条3項では、相手が16歳の場合、同意があれば不同意わいせつ罪、不同意性交等罪は成立しません。面会要求の後に待ち受けている性的行為は処罰対象とならないのに、その性的行為をする目的で面会を要求すると処罰されるということになって、整合性がとれないからです。

個々の要件について

「わいせつの目的」とは

面会要求の相手にわいせつ行為をする、または、わいせつ行為をさせる目的をいいます。ここでいう「わいせつ」は176条のわいせつとは異なり、性交及び性交類似行為を含みます。わいせつ行為は行為者自身のためであろうと、第三者のためであろうと構いません。

「威迫」とは

相手に対して言葉や動作で意気込んだ様子を示し, 不安,困惑を生じさせる行為のことをいいます。

「偽計」とは

人を欺き、誘惑すること、人の錯誤や不知を利用すること、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いることをいいます。

「誘惑」とは

心を迷わせて、さそい込むことをいいます。

「金銭その他の利益」にいう「その他の利益」とは

「簡単にお金が稼げるバイトを紹介する」といった財産的な利益に限らず、「今度試合に出させてあげる」といったような財産的でない利益も含みます。

当事務所が行う弁護活動

情状が軽い場合でも、罰金刑があるため略式起訴(書面上起訴されるだけで裁判を受ける必要がない。)で処理されることになり、不起訴処分とはなりにくいでしょう。そのため、事実を認めた場合、略式起訴により罰金刑で済ますようにすることが、弁護活動の目的になります。

拘禁刑

本罪を犯した場合の刑として「懲役刑」ではなく、「拘禁刑」が定められています。2022年にも刑法改正があり、改正12条は、懲役刑・禁固刑を廃止し拘禁刑に一本化するとともに、「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」としました。

懲役刑に処せられると、必ず「刑務作業」を行わなければなりません。しかし、有期拘禁刑に処せられた場合、刑務作業を一律に行わせるのではなく、受刑者の年齢や特性に応じて、改善指導や教科指導を柔軟に行うことが可能になります。また、最近受刑者の高齢化が進んでおり、認知症の受刑者に刑務作業をさせること自体無理があるのですが、法律上刑務作業が義務付けられているため、刑務所の職員の大きな負担になっていましたが、この点も改善されることになります。

ただ、2022年改正刑法のうち、懲役刑と禁固刑を拘禁刑に一本化するためには、刑事施設側の準備も必要なため、同改正部分の施行は3年後の2025年とされています。そのため、本罪も、同法改正が施行されるまでは、懲役刑に処せられることが経過規定で定められています。

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