薬物事件

薬物事件について

薬物犯罪は、薬物を使用する者の心身を蝕むに留まらず、幻覚等に起因して他人を殺傷するなどの凶悪事件に発展する恐れがあります。また、薬物密売による利益が暴力団等の反社会的勢力の重要な資金源となっています。
このような事情から、薬物犯罪の撲滅が強く要請されており、薬物犯罪の起訴率は他の事件に比べ格段に高くなっており、よほど軽微な事案でない限り、起訴されます

起訴された場合、例えば、覚せい剤使用罪に関しては、裁判所は、同種前科、使用頻度、使用期間、使用方法等で、どれだけ薬物に依存しているかを判断し、量刑を決めます。覚せい剤所持罪に関しては、その所持量が最も重要な判断材料になります。

危険ドラッグについて

危険ドラッグとは、麻薬や覚せい剤などの規制薬物と類似の効果にもかかわらず、規制薬物の成分を含んでいない薬物を指し、「合法ハーブ」「脱法ハーブ」「「脱法ドラッグ」「違法ドラッグ」と多様な名称で呼ばれています。

危険ドラッグは、インターネットの通信販売、雑貨店等で入手しやすいことが特徴です。その多くが、「お香」「アロマリキッド」「ハーブ」「アロマ」「バスソルト」等と称して販売され、違法ではないと安易に考え、軽い気持ちで手を染めてしまう人が後を絶ちません。

近年、危険ドラッグの服用者が錯乱状態となり救急搬送され、時には死に至る事件、危険ドラッグの服用者による重大な交通事故が急増しているため、積極的に法改正が実施されています

危険ドラッグを使用して、正常な運転が困難な状態で、交通事故を起こして人を死傷させた場合、危険運転致死傷罪が適用され、最長で20年の懲役刑が科される可能性があります。

(コラム)危険ドラッグに対する規制

危険ドラッグに対する規制については、麻薬及び向精神薬取締法を根拠に、有害性が裏付けられたものを麻薬に指定して取り締まる等の対策がとられてきました。しかし、有害性の裏付けに時間がかかり、危険ドラッグが社会に流通することを即座に止めることはできません。また、ある種類の危険ドラッグを規制対象としても、規制された危険ドラッグの科学構造を一部組み替えることにより、規制の及ばない新たな危険ドラッグを生み出すということが繰り返し行われ、いわゆるイタチごっこの状態でした。

そのような中で、危険ドラッグに対する規制強化の取り組みとして、薬事法改正により、指定薬物制度が導入され、有害性が十分に証明しつくされていない段階でも、厚生労働大臣が指定薬物と指定することを可能にし、新規薬物に迅速に対応することが可能となりました。さらに、包括指定制度も導入され、物質の基本的な化学構造をとらえ、それを規制すると共に、少々の変更を加えただけである同じ化学構造をもつ物質は、まとめて規制対象とできるようになりました。

使用する危険ドラッグが、現在規制されていない適法なものかどうか、使用者には分かりませんし(危険ドラッグを販売するような売人が「適法だ」と言っても信用できません)、仮に適法だとしても、いつ規制対象に含まれるか分かりません。安易に危険ドラッグを所持、使用してしまうと、自身の心身に重大な影響があるだけでなく、重い刑事罰を受けてしまうことになりかねません。危険ドラッグを所持、使用することは絶対に止めるべきです。

罪の重さは?

覚せい剤

営利目的なし 営利目的
使用・所持・譲渡・譲受 10年以下の懲役 1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金を併科

大麻

営利目的なし 営利目的
所持・譲渡・譲受 5年以下の懲役 7年以下の懲役、又は情状により200万円以下の罰金

麻薬及び向精神薬

営利目的なし 営利目的
ヘロインの所持・譲渡・譲受 10年以下の懲役 1年以上の有期懲役、又は情状により500万円以下の罰金を併科
ヘロイン以外(コカイン・モルヒネ・MDMA等)の所持・譲渡・譲受 7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役、又は情状により300万円以下の罰金を併科
向精神薬の所持・譲渡・譲受 3年以下の懲役 5年以下の懲役、又は情状により100万円以下の罰金を併科

危険ドラッグ(薬事法違反)

営利目的なし 営利目的
使用・所持・製造・輸入・販売・授与・購入・譲受 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金又は併科 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金又は併科

罪を認める場合の弁護方針

薬物事件の場合、規制薬剤自体や使用器具の捜索、押収、および尿の採取手続きなど捜査機関による違法な捜査が問題となることがあります。弁護人としては、違法捜査が認められる場合にはただちに抗議します。また、将来において違法捜査がなされないように注意しつつ、最終的に不起訴処分となるように積極的な弁護活動を行っていきます。

危険ドラッグの場合には、そもそも法律や条例で規制する成分が含まれていなければ、逮捕や起訴などにはつながりません。一方、規制する成分が含まれている場合には、その危険ドラッグの使用や所持に至った経緯などを、本人から丁寧な聞き取りを行ったうえで、違法薬物であることの認識に問題があるとして、捜査機関に働きかけていきます。

なお、禁止・規制薬物の使用や所持に間違いがなく、本人も違法薬物であると知りつつ、使用や所持を行った場合には、薬物の治療機関に通所させたり、親族などの監督を受けることを誓約させたりなど、有利な情状を作り出し、捜査機関や裁判所に対し主張していく情状弁護が中心となります。

無罪を主張する場合の弁護方針

薬物の所持や使用を認めない場合には、その理由を確認することが重要になります。

例えば、尿検査の結果、覚せい剤の摂取が確認された場合であっても、自らの意思によって覚せい剤を摂取したのではない(知らない間に他人に摂取させられた)のであれば、これを起訴前から検察官に主張して、不起訴となるように弁護活動を行います。
また、鑑定された尿や薬物自体の採取過程に問題がないかについても検討することになります。

薬物事件の解決事例